リアルな

ようやく安倍なつみのエッセイ「ALBUM 1998-2003」を読み終わった。

モーニング娘。として活動していく中での出来事を通じて、彼女が感じたことがありのままに綴られている作品。その内容は、ここまで文章にしていいのかと思ってしまうくらい彼女の素直な思いが綴られている。

独特な文体もいい。彼女の語りが脳裏に浮かんでくるようで、文章自体のリアリティを高めている。

モーニング娘。に現役で活動しているメンバーがこういった作品を出すのは初めてのことであり、初期メンバーとして、結成前からの出来事をすべて体験してきた彼女の手による作品だけに内容も興味深いものだった。

自らが選んだ道とはいえ、時に傷つき、思い悩んだ、そういう出来事が赤裸々に語られている。彼女の満面の笑顔の裏側にはこういう苦悩を乗り越えてきた歴史があるんだなあとしみじみ思う。

そして、そういった苦しみを乗り越えて、モーニング娘。をやってきて良かったと語る彼女は、すごく輝いている。

また、メンバーについての彼女の語りも興味深かった。特に、飯田との確執と和解の一節はちょっと衝撃的だ。そんなこと書いちゃっていいのかと思ってしまうけど、今だから話せることなのかもしれない。

仲介役を買って出たのは保田ってあたりも、そういう役回りを果たすのはやっぱり彼女なんだなあと思うわけで、納得。卒業前になんとかしたかったという思いも伝わってきてなおいい。

この一節だけでもこの本を読んだ価値があったと思った。普通に仲良しエピソードだけが載っていたら、ちょっとリアリティに欠けていて、ふーんなるほどと思うだけで終わったかもしれない。

いや、この一節だけではなく、全体を通じての語りのリアルさが安倍なつみ、そしてモーニング娘。に興味のある人間にとってはすごく伝わってくるものがあって、今までのどんな作品よりも彼女たちに触れられた気がした。

もちろん、彼女、彼女たちのフィールドは、歌であり、芝居であり、その他の活動だ。だけど、僕は声を大にしてあえて言いたい。

安倍なつみ、そしてモーニング娘。の姿とこれほどリアルに向き合える作品を僕は知らないと・・・。