青い鳥を探しに君は行くんだね
初めて、彼女の存在を知ったのは、2ndシングルのサマーナイトタウンがリリースされた後くらいのことだったと思う。モーニング娘。がなんとなく気になりだしていた僕は、メンバーの名前くらい覚えておこうかなとふと思って、歌番組に出ている彼女たちの顔と名前を一致させる作業を始めた。
最年長なのが中澤さんで、一番かわいいのが安倍さんでみたいに適当に符号をつけていく・・・。地味で目立たないのが市井、そんな彼女との最初の出会い。
それからしばらく彼女は、ノーマークの存在だった。
やがて運命の瞬間は訪れる。時は流れて、1999年末、LOVEマシーンのヒットで勢いに乗る彼女たち、即戦力ルーキーの後藤を中心としたユニット「プッチモニ」が結成される。ASAYANで放映されたプッチモニ合宿。高熱をおしてがんばるショートカットの女の子に僕は心を奪われた。
怒濤の勢いでスターダムにのし上がる娘。の勢いそのままに一気に頭角を現した彼女の快進撃。ますます彼女の虜になる僕がいた。当時、仕事とか私生活のことで悩むことが多かった僕にとって彼女の活躍する姿は勇気を与えてくれた。
しかし、転機は突然訪れる。晴天のへきれきともいえる卒業の発表。シンガソングライター?ラストは武道館?脳天を直撃されるようなショックが僕を襲った。生で歌い踊る彼女の姿を見ることなしに終わってしまうなんて・・・。もはや、僕には、卒業までの短い時間にブラウン管に映る彼女の姿を必死に焼き付けることといつか彼女が戻ってくることを信じ抜くことくらいしかできなかった。
迎えた5月21日武道館。僕はその場には行かなかった。なぜなら、最初に彼女を生で見るのは彼女の復帰ライブにしたかったから・・・。
それから、短い彼女の記憶に浸りつつ、彼女のいないモーニング娘。を見る日々が続いた。見るたびに人数を数えて、やっぱりいない・・・という無意味な作業を繰り返すこともやがてなくなっていった。国民的アイドルの称号をほしいままにするモーニング娘。の活躍は彼女の不在を埋めてくれるものだった。
だけど、なにか足りないものを心の片隅に感じていた。いつか戻ってくると言ったあの娘の言葉をずっと信じていた。そして、足りない何かを埋めてくれるのは彼女しかいないのだと感じていた。
知らせはやはり唐突にやってきた。突然の復帰発表。ソロではなくユニットという形態に違和感は感じつつも喜びの方がやはり大きかった。半分あきらめつつも信じ続けた思いが通じたんだ。信じることのすばらしさを感じた瞬間だった。
渋谷AX 輝かしいスタートとなるその場に僕はいた。彼女の復帰ライブを彼女を生で見る初めての機会にしようという僕の思いは、1年半の時を経て果たされたのだ。
歓喜の時を経て、やがて現実の壁にぶつかる。プレデビューという曖昧な形態で再スタートした彼女の活動。カバーアルバムの次は、写真集の発売だった。シンガソングライターになるために戻ってきたのではないのか、疑問符を付けたくなるような活動だった。
その時点では、春にある本格的なデビューへの期待が大きく、疑問はそれほど大きいものではなかった。しかし、待望のデビュー曲は決して名曲とはいえない楽曲だった。持ち歌もあまりないままのライブ。そこで歌われたのは娘。のカバー。
違うだろ!思わず叫びたくなった。
そこで生じた決定的な溝はもう埋められなかった。違和感を抱きつつファンでありつづけることにやがて疲れ果てていた。追い打ちをかけるような2nd、3rdシングルの出来。そこにあったのは失望。続く音楽的にそれなりに納得できる内容となった1stアルバムが届いたときにはもう遅かった。
アーティストの目指す音楽性とあわない以上、結論はただ一つ。僕はヲタをやめるしかない。
今年初めの最後のライブツアー。客の入りには恵まれなかったが、彼女なりのものをだせるようになっていた。その歩みはゆくっりと、でも少しずつ手がかりをつかんでいると僕は思った。すこし、うれしかった。先の見えないことへの不安はあったけど、彼女は彼女なりの道を歩めばいい。そう思った。だけどそれは、もはやヲタとしての目線ではなく、ヲタであった者としての目線だったかもしれない。
そのときのツアーが彼女を生で見る最後の機会になった。それからの彼女の活動については、ネット上での間接的な形でしか知らない。
今回の結論に至るまでに何があったかはわからない。ただ、あまりに唐突なので驚くばかりだ。あれほど歌にこだわっていた彼女が歌うことをやめてしまうか。こだわるからこそ行き詰まってしまったのか。
いやこれ以上詮索はしまい。彼女が選んだ道だから。
本当、振り回されっぱなしだなあ彼女にはと愚痴もいいたくなるけど、それ以上の何かをもらったことに免じて許します。これからの彼女の人生に幸あることを祈って。
最後にひとこと。気が向いたらいつでも戻って来いよ!ずっと待ってるからね。